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勘違いに注意! 死後の財産相続のために書くのは「遺書(いしょ)」ではない!

法律のプロが教える、相続と遺言の豆知識 第5回

「遺言」「遺書」「エンディングノート」……どれも自分の死後遺された人々に対するメッセージだが、一体何が違うのか? 何を、どのように書くかによって、法律上の効果として違いはあるのだろうか。自分の遺志を確実に届けるためにも知っておきたい、法的な効力を残すためのポイントを東京永田町法律事務所代表・長谷川裕雅さんに教えていただいた。

書くべきは「遺書(いしょ)」ではなく「遺言(ゆいごん)」

 「遺書(いしょ)」とは、死後のために書き残す文書や手紙のことで、特に書式などが決まっているわけではありません。よくドラマの中で、首つり自殺の死体の脇に置いてあるものが遺書です。ちなみにダイイング・メッセージとは、推理小説などで、殺人事件の被害者が死ぬ直前に書き残したメッセージのことで、犯人を知る手がかりとなるもの。
 「遺言(ゆいごん)」とは、人が、自分の死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、相続人の廃除、認知などについて、民法上の一定の方式に従ってする単独の意思表示のことです。
 遺言は法的に効果がある部分と、ない部分に分かれます。前者は誰にどの財産を残すか(遺産分割方法の指定)や、誰々にはどのくらいの財産を相続させるか(相続分の指定)などの事項です。これに対して、遺言者の最後の思いや遺言を残した経緯などは遺言の末尾に付言事項として書かれますが、法的には意味を成しません。つまり、守るも守らないも相続人次第です。

「遺言」「遺書」「エンディングノート」は似て非なるもの。それぞれの特性を理解して使い分けたい。

 とはいえ、法的に効果がない部分でも、遺言にとっては非常に重要です。いきなり自分に不利な遺言内容を突き付けられた相続人は、なぜこのような分割方法を指定したのだろうと考えるはずです。納得がいかない相続人が、遺言が偽造されたとして遺言無効確認訴訟を起こすこともあります。作成者が遺言作成に至った思いを明示することで、相続人の疑念や不満を払拭し、納得させることができるのです。

法律的には無効でも、存在意義が大きいものも

 法的に有効な部分は遺言に記し、遺言作成の経緯や意図についてはビデオを活用するという手もあります。
 ビデオによる遺言は法的に無効ですが、思いを伝えるという意味では、本来の遺言のサポートとして、むしろ積極的に活用すべきものです。
 では、流行のエンディングノートはどうでしょう。こちらは遺言とは異なり、備忘録的な役割が主になっています。所有不動産や銀行・証券会社の口座番号などを記載する欄もあります。これらの内容は重要で、遺言の財産目録にも登場するものです。「終活」がにぎわう現在、本屋や文房具屋、さらには保険会社や証券会社、葬儀屋までがエンディングノートを出していますから、目にされたことがある方も多いと思います。記入式のほかに、パソコンで必要なことを入力してUSBメモリーで保管するものなどさまざまです。パスワードをかけて、相続開始後に確認できるようなサービスもあるようです。

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長谷川 裕雅

はせがわ ひろまさ

東京永田町法律事務所代表。弁護士・税理士。早稲田大学政治経済学部を卒業後、朝日新聞社に入社。記者として多くの事件を取材する。その後、一念発起して弁護士へ転身。弁護士・税理士として争族と相続税をトータルに解決できる数少ない専門家として、相談者から絶大な信頼を集めている。主な著書に『磯野家の相続』(すばる舎)、『波平は「相続」であわてない! 磯野家に学ぶ33ヶ条』(文藝春秋)、『相続で泣きたくなければ不動産のしくみを知りなさい!』(PHP文庫)、『なぜ酔った女性を口説くのは「非常に危険」なのか?』(プレジデント社)などがある。


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  • 長谷川 裕雅
  • 2014.04.16